わきが(ワキガ症・腋臭症)とは
腋臭症とは腋窩(脇の下)に特有の臭気を発する状態で発汗によって臭気は増強します。わきがは男女共に発症します。
わきがは日本人には少ないといわれています。通常思春期より発症(腋毛の発毛時期に発症)し、高齢になれば症状は軽減します。わきがは遺伝傾向があり両親のどちらかや親族に腋臭もしくはわきが体質の方がいることが多いですが、両親の状態によってはっきりしない場合もあります。体質のため途中から突然わきがになったり、他人から感染するということはありません。
またわきがと思って来院される患者様の中には、一種の神経症である「自己臭症」や「体臭恐怖症」の方もおられます。ワキガの自己チェックを行なってみましょう。
わきがの原因
わきがの原因は、アポクリン汗腺から分泌される汗と細菌。
汗には、主に体温調節を目的とした「エクリン腺の汗」と、「アポクリン腺から分泌される汗」があります。エクリン汗は運動や病気などで体温が上がった時に出る汗で、汗腺はほぼ全身の皮膚にあります。エクリン汗の成分は98%の水分とごくわずかな塩分等、このためエクリン汗腺は直接にはわきがの原因にはなりません。
一方、アポクリン汗腺から分泌される汗の成分は、脂肪酸・鉄分・色素・蛍光物質・尿素・アンモニア等。エクリン汗腺からの汗と違って粘り気があり、特殊なニオイを出します。
アポクリン汗腺から分泌される汗に含まれている少量の脂肪酸が皮膚の細菌によって分解されて低級脂肪酸になり、悪臭を発するといわれています。
アポクリン汗腺は腋窩以外に外耳道や陰部にも存在します。そのため耳垢が湿っている人が多いといえます。細菌はグラム陽性球菌であるブドウ球菌が主とされています。
当院の検査でも腋臭症患者の約7割の方に表皮ブドウ球菌を認めました。
何故、アポクリン汗腺は人体に備わっているのでしょう・・・
人のアポクリン汗腺は、わきの下や外耳道、乳房、外陰部、肛門の周辺などに存在します。人以外の哺乳類では全身に存在することが多く、動物にとってアポクリン腺は仲間同士の確認や異性をひきつけるフェロモンのような役割があります。人の「性ホルモン」にアポクリン汗腺を活発化させる作用があり、思春期以降(女性の場合は初潮の頃)にワキガが発症することが多いのもこのためです。
アポクリン汗腺自体は産まれたときから存在するのですが、誰もが持っているアポクリン汗腺が「腋臭症(えきしゅうしょう)」の原因になるのは、ワキガ体質の人のアポクリン汗腺がそうでない人に比べ、汗腺量が多く、働きが活発なためです。
ワキガの自己チェック
ご自身がわきがだと思っていても実際は違う場合があります。また、家族以外の他人にはわきがなのか尋ねにくいのも確かです。お近く医療機関(形成外科や皮膚科)を受診されればよいと思いますが、その前に簡単にできるワキガの自己診断項目があります。
- 1家族や親戚にワキガの人、またはワキガ手術を受けた人がいる。
- 2自分の腋のニオイが気になりだした年齢は小学校高学年から20歳くらいまでの間である。
- 3シャツに黄色い汗染みができる。
- 4汗をかいた後にニオイが増強する。
- 5耳垢(みみあか)が湿っている。
以上の項目のうち「3つ以上」当てはまる場合は、絶対ではありませんがワキガ体質の可能性があります。気になる場合は医療機関を受診して相談するのもよいと思います。
ワキガの体質でも軽度の場合があります。その場合、汗をかく仕事や環境以外では日常生活で清潔に気をつけることで、周囲の人に気づかれなくすることもできると思います。自分が気にしないなら無理に手術や治療を受ける必要もありません。ワキガや多汗症は体質であり、病気ではありません。
日常できるワキガ予防とお手入れ法
ワキガや多汗症は「体質」であり病気ではありませんので余り神経質にならず、普段から「清潔な毎日」を心掛けることが大切です。
1 | 毎日入浴をする |
---|---|
2 | 汗をかいた後はすぐにシャワーなどを浴びる |
3 | 汗をかいた後はすぐに清拭して乾燥させる |
4 | 制汗剤(アルミニウム化合物、酸化亜鉛等配合剤)を使用する |
5 | 殺菌剤(イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム等配合剤)を使用する |
6 | 消臭剤(酸化亜鉛、茶エキス等配合剤)を使用する |
7 | 腋が乾燥しやすい衣服を選ぶ |
8 | 下着や汗パッドをこまめに取り替える |
9 | 腋の毛を剃る |
9番目の項目(腋の毛を剃る)は、アポクリン汗腺が腋毛の毛根部に存在し、汗や他の分泌物が付着して細菌を育ててしまうケースが多いからです。
それぞれのライフスタイルや就労条件・職場環境などによってできることとできないこともあり、かなりの覚悟と労力も必要かと思います。
昨今数多く市販されている「デオドラント製品」は、汗のニオイを抑えるために多くの方が愛用されていますが、収斂作用で発汗しにくくさせる「制汗剤」、ニオイの素となる細菌を薬剤で殺す「殺菌剤」、一般の消臭剤と同様にニオイを中和したりマスキングする「消臭剤」があります。しかし、これら「デオドラント製品」は汗のニオイを抑えるためだけのものであり、ワキガ治療用として作られたものではありません。また、肌のカブレやカユミの出るケースもありますので肌に異常が出れば中止しましょう。